阿部共実だから途中からやばくなってくるのはわかってた。
わかってたけど、全一巻の中編になると貯めの分やはりダメージがでかい。
人間関係のこじれはそのまま世界のこじれになる。世界が終わるんだから怖いに決まってる。悪にやられる正義の構図ならまだやっていける。自分の悪に自分が苦しめられる。
タイミングひとつで小さな悪いことをしちゃってそれが重なってうまくいかなくなって、そんときの恐怖は…
まっっったく言葉にできない。
中学生の生きてる世界。
二面性、純粋な美しい善の気持ちもいやらしいずるい悪の気持ちもどっちもある。ナツはそれがわかってないから苦しい。悪だと思ってた藤岡が善で、じぶんが悪だって思っちゃって。
旭とはもう戻れない。全部わかってる読者からしたら簡単なもつれだけど、本人たちからしたらもうほどけない。お互いを信用できない。
階級差が出てきてそれをみんな自覚し始める中学生のときにあのもつれはもうどうにもならないやつだ。ナツの電話を受ける旭の「なんで?」で決定的。
強い絆だったけど、簡単なことできえる。矛盾はしない。中学ならあり得る。簡単に駄目になったから強い絆じゃなかったってことじゃない。
片方の出来心の、たまたまの悪で0になる。小学校からずっと仲良かったとしても。
それだけでも辛いのに、それは連鎖する。どんどんどんどんゼロゼロゼロゼロいままでのが全部0になる。
ギャンブルで長年貯めた有り金がどんどん減っていくのと同じ恐怖。時間、世界がなくなるのに何もできない。黒い顔になる。そりゃそうなる。
命と同じくらい大事な人間関係が死ぬほど壊れやすいことがわかって今それが壊れそう既に壊れてるって一気に悟ったときの顔があの黒い顔
友達が階級高めのやつに攻撃されてるのになんにもできないで、そのことが負い目になって普通に話した後落ち込むとか、世界が壊れそうなときぎゅうううってなるのとか、あるある~~~って感じだよね
大切にするって言って買ってもらったものを投げたり、あとで絶対いらなくなる欲しいものを買ってもらえなかったり、
読むの辛いに一ページごとに心やられるけど、そんな自分を客観視してる自分がでてきて、これに心やられてる自分が好きみたいになってややこしい
主客未分。読み返したらパラパラ読んでるだけなのにキツくなった。今タイプしてるときはもうどんな気持ちだったか思い出せない
ただそのまま漫画の衝撃を受けてる瞬間だけが本物でそれを客観視しはじめると嘘になる
これが一位になるのは文化的にはイイコトだけど、これに共感する人がたくさんいるってなるとこの社会は辛い世界なんだなとか思ったり
「じゃあこんなのいらないっ」
「お人形さんかわいそうでしょあんたが選んだんでしょ」
「これいらないから光るおみくじ買って!なんでなんでわたしだけわたしだけいじわるするのみんな買ってもらってるのに 光るおみくじ 光るおみくじ」
「私だってたまには好きなものくらい買ってもいいでしょう?」
「しゅわしゅわしゅわしゅわ~ん!」
「ちょっとくらいちょっとくらい恵まれたっていいでしょ私たち」
「私たちはなんでこんなに足りないの?余ったものでいいからちょうだいよ何か」
セリフも絵も部分部分で切り取ってみたら大したことない。すべてあわさって凄い威力になる。漫画に殺されそうになるっていう表現ださいかもしれないけど、モテキとか宮本から君へで感じたのと同じような気持ちはそういうのが適当。
ちーちゃんはちょっと足りない (少年チャンピオン・コミックスエクストラもっと!)
- 作者: 阿部共実
- 出版社/メーカー: 秋田書店
- 発売日: 2014/05/08
- メディア: コミック
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