漫画が映画より優れている理由とドキュメンタリーについて

映画よりも、漫画の方が素晴らしい作品が多い。なぜなら漫画は主に一人のクリエイターが作るから。個人が伝えたいと思った表現がフィルターを通さず生で伝わってくる迫力がある。チームではフィルターが多く、表現が丸くなってエッセンスが失われる。ピクサーのように超有能な集団が最高のチームワークでまるで一人のクリエイターのように作品を作れればそれは素晴らしい作品ができるだろうが、そうやって作れる作品数には限りがある。最高のチームが世界に100あって毎年100本の作品を作れるとしても、素晴らしい個人のクリエイターは数十万単位でいるので作品の母数で圧倒的に上回る。

映画は実際の人間が動いて色も音もあるので本来映画のほうがポテンシャルはある。が、現在の人類の能力では映画のポテンシャルを活かしきれない。アニメも同じ。ポテンシャルで言えば最高レベルだが、人間界の事情によって名作は少ない。だから映画は積極的に見ようと思えない。

ただ、ドキュメンタリーは面白いと最近思う。人間界で起きていることそのものを見ることができる。編集によって二次情報的にはなってしまうけど、それでも一次情報に近い。漫画ではどうしても二次情報になってしまう。作者を通した世界を見ることができる喜びはあるけど、何も通さずに世界を見たい欲求のほうが大きい。何も通さずに世界を見たいなら自分の目で見ればいいじゃないかというがそうじゃない。二重スリットとは違うけど観測した時点で物事が変わってしまうというやつで、自分がいない場で起きている物事が見たい、ので、ドキュメンタリーはありがたい。松本大洋によって凝縮された佐久間学も素晴らしいが、SiS消滅の詩の清水の生の顔もそれと同じくらい感銘を受ける。チームで作らなければいけないという映画の弱みも解消される上にローデータの魅力もあるドキュメンタリーというジャンル。でも良作を探すのが難しい。とりあえず、「なぜ君は総理大臣になれないのか」を観てみる