双子

17:30からの1コマ。教室の脇に自転車を止める音がする。ドアの前では双子二人で談笑しているようだが教室に入ってくるととたんと黙る。T屋の双子がもしかしたらその流れで先生である俺とも会話したいのかもしれないしそんなことは全く考えていないかもしれない。俺はこの双子と仲良くなるつもりはない。生徒と仲良くなりすぎるとあとでツラくなる。マンネリする。生徒が増えたとき、会話できなくなってお互い気まずくなる。授業に対する気持ちが強くなりすぎて自分の時間がとられる。

そういう気持ちに加えて、この二人がブスだからっていうのもある。ブスで暗い双子。中学の時点で未来の顔に希望が見えないブスはたくさんいる。この二人もそのタイプ。本当に暗い人間なんていない。それでもオープンクエスチョンには無言クローズドクエスチョンでは頷くときのみ1センチ顔が上下するだけの置物は暗いと呼ぶしかないじゃん俺の語彙のせいかもしれない。

俺がこんちわーと挨拶する。双子は何も言わずスリッパに履き替えて席につく。無視という顔じゃなく、こんちわーと返すのに慣れていなく何も言えないという表情。俺もそうだったからわかる。

双子はそれぞれ英語と数学をやる。何組か双子の生徒を見てきたが、どの双子も違う科目を選択する。同じ塾に来てるくせにそこだけは個性を出す。子どもの頃、双子はイケメンか美人のどちらかだと思っていた。クラスの双子もテレビに出てる双子もイケメン美女ばっかりだった。高校で卓球をやったとき、バカ高の卓球部にキモくて下手な双子がいて、こいつら双子のクセにバカな上にキモくて卓球も下手とかろくでもないな。無駄な双子だって思ってた。出来の悪い双子はどういう気持ちなんだろう。自分と同じくブスで頭の悪い鏡が動いてるのを見るのはどんな気持ちか。